メモのようなもの

映画と舞台の感想とか諸々

two years later

アケカスソングだけどアケカスの話じゃないよ!


2年前、11月17日は少し寒い日曜日でした。
就活を目前にしつついつものようにバイトを終えたわたしは日比谷にいた。
その日は宝塚花組公演の千秋楽。
3人の退団者にとっては最後の宝塚の舞台だった。その中に私が当時本気で応援していた男役さんがいた。
2人の退団者の後に楽屋から出てきた彼女はとても美しくて。
でも見返すと辛くて動画も画像もそっと消してしまった。   


彼女のファンになったのはその数ヶ月前の「オーシャンズ11」。
冒頭の男役群舞でのひときわ足の長い彼女にひかれた。そもそもポスターから惚れてたけれど、垂れる前髪から溢れる色気は実際に見るともうドキドキしてしまった。
その後の戦国BASARA伊達政宗も、ゲームファンの友人から好評で自分のことのように誇らしかった。  

それからしばらくして。

退団発表があった。

宝塚はトップ以外は、公演1ヶ月前の「集合日」に退団者が発表される。
確かその日は大学のテスト期間だったかで、たまたま開いたツイッターで彼女が退団とつぶやかれていた、ような気がする。
あまりにもショックでどうにも思い出せないのだ。
その日からはとにかくいろいろな手を尽くしてチケットをかき集めた。
結局片手の数では足りぬほど通いつめて、
最後の方では彼女が舞台に出るたびに目が潤んでいた。
何となく、彼女の舞台に立つ姿はもう見れないと思っていたのだ。   


芝居は彼女は悪役だったしそこまで泣かずには済んだのだけれどショーがきつかった。
今でも涙が溢れる。
宝塚のショーは、演出家によっては退団者のための場面を作ってくださる。
彼女にもそのシーンがあって、「もうお別れだけれどまた会えるよね」なんて歌われるのだ。
最後の観劇で、彼女とその歌詞を歌いあった男役さんが涙を流していて(いや汗かも・・・)余計に苦しくなった。
ラストの大階段、彼女はお辞儀の際に投げキッスやウインクをしていて。
何てかっこいいんだろう、なんて素敵なんだろうと最後まで思わされていた。



宝塚の劇団員に既婚者はいない。結婚する方は「寿」として退団していく。
それはひとりふたりではないし、退団ボリューム層も適齢期だし、むしろ当たり前のことで。
退団発表の時点で、なぜか彼女もその理由だと感じていた。
結局はわからないけれど、退団してまもなくご結婚されたので理由のひとつではあるだろう。
だからこそ未だになんとなく辛いのかもしれない。     

でももう2年なんだ、と今日職場のデスクのカレンダーを見て気付いた。
あの頃バイトをしつつ就活に不安を抱えていた私は今では上司のしょうもない言動で具合が悪くなりながらどうにか社会人をしている。 
宝塚のトップスター体制も、番手も変わった。

いつの間にか今はどんな髪型をしてどんな服を着てるのかもわからない彼女が幸せそうにしている話を聞くとそんな素敵な人を応援できた私は幸せなのだと思うようになった。

アイドルもジェンヌも、他より顔の良い女性だ。男役だろうとひらひらした服を着るアイドルだろうとたくさん男は寄ってくるし、その中の誰かと同じ苗字になる確率は高い。ならばそれに怯えるよりも相手に嫉妬するよりも、そのとき私の好きな人が誰よりも幸せに笑っていてほしい、と願うオタクでありたい。

 
なんてことを彼女の退団公演を見ながら書いてみた。