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メモのようなもの

映画と舞台の感想とか諸々

「この世界の片隅に」

★★★★★

 

今年、日本映画の秀作率が高い1年でしたが年末にとんでもない作品と

出会えました。

泣ける映画はいくらでもあるけれど(涙もろい)、見たあとも定期的に涙が出て、

泣き疲れてしまうのはなかなかありません。

 

広島から軍港のまち・呉に嫁入りしたぽやーっとした女性・すずさんの物語。

彼女の幼少期からゆったりと日常が描かれ、

戦争の描写はあまり多くありません。

しかし、その日常描写があるからこそ戦争が恐ろしく悲しく伝わってくる。

あまりにも突然やってくる、どこへ行ったんじゃろうと思っていたのに。

 

幼少期のはなしを含めて、多くの出来事が後々につながってくるのが

感動的。

 

戦争描写、といえばよくある「憲兵」の存在ですが、それが笑いに変えられてしまっているのも独特。

当時を知らない私たちは暗い歴史だと思っているけれど、

あの頃だって人々は時に笑ったり、一生懸命生きていたんだと気づかされる。

 

この映画はクラウドファンディングで作られたのですが、それだけでなく

時代考証がとてもしっかりしていて、当時住んでいた方々にお話を聞いて制作しているのが本当にすごい。

テレビ番組でも紹介されていた理髪店のおはなしを知ってから鑑賞したので「ここか!!」と感激。もうこのあたりから泣いておりました。

 

ここまでストーリー諸々を書きましたが、

すずさんのキャラクターはもちろんですが、多くのキャラクターが魅力的でした。

寡黙で、しかし深い愛情を持っている夫周作さんやすっごく冷たいけれどだんだん優しくなる径子さん。その娘で天真爛漫な晴美ちゃん。

径子さんはかつてはモガで、自分で生きて嫁ぎ先を見つけてきた強い女性。すずさんとは対照的で、だからこそ頼りないすずさんを実は気にかけてくれるという。

終戦後の径子さんもすごく素敵でした。

晴美ちゃんは・・・ネタバレになってしまうけれど、でもとても好きなキャラでした。

 

 

戦争ですずさんはあるものを失います。同時にかけがえのないものも。

そして、運命の日。あまりにも静かに起きたそれはすずさんの住む呉の人々にも

影響を与えることになります。

あれ、もしかして・・・と思った存在が、とある事実を抱えていたことを知らされます。

けれど関わる人は、それでも生きなければと前を向く・・・

すずさんもまた、運命の日にさらに大切なものを失います。

すずさんの妹、すみちゃんも・・・これです、という言葉はないけれど

「ああそういうことなんだな」と理解できる構造になっていました。

 

そして、終戦。たくさんのものを失っても、それでもと思っていたのに

断たれてしまった。終わりに安堵する人もいれば、もっと早く終わればと悔やむ人も

いるわけで、それが戦争なのかもしれない。

 

 

 

終戦ののち、あらためて広島に向かったすずさんは周平さんに感謝の言葉を述べます。

ここでもう「名作!!!やばい!!!泣ける!!!(小並感)」となるのですが、

さらに暖かな結末が待っています。

失ったからこそ、すずさんが得たかけがえのないもの。

すずさんだけではなく、他の人にとってもそれはかけがえのないものでした。

エンドロールも本当、すっっっっっごく素晴らしいので絶対に見て、最後まで席を立たないでほしい、そんな作品でした。

 

 

こういう映画、シニア層が多いというイメージでしたが若い方も今回、多かったです。。

わたしも含めて当時をよく知らない、知る人と話せる機会も減ってしまった若者達にいろんな感想を抱かせたこの作品、また観たいです。